ビデオでひとつ作ってみて思ったことは、私は顔の表情の動きに関心があるのだということで
した。人形の身体がどれほど動こうと、顔の表情がはっきりとわからないショットはあまりピン
ときません。顔の動き、それも基本的に哀しみや苦しみの表情にこそ、私は美を感じたので
す。人形たちが悲しみ、涙を流し、苦しんでどうしようもなくなった後に、ふと風が変わったよう
に見せる微笑・・。当時は頭でこう考えていたわけではなく、心のままに進めてゆくと、なぜか
いつもそうなるのです。今となって、はっきり見えるのですが、これは私自身なのですね。自分
の情念のようなものを投影しているからこそ、この作業は私にとって非常な魅力をもっていた
のです。
上の子は、油粘土で作った頭部のみの子です。涙は蜂蜜です。ゆっくり流れてくれるので、と
ても良いのです。この写真は、どっちつかずの表情ですが、少し笑ったり、つらそうにどんどん
ゆがんでいって、ついに発狂してしまう・・というシーンもありました。
8ミリ作品のタイトルは、『Trauma-トラウマ-』という、そのものズバリの題でした。1991〜92
年当時は、この言葉は今ほど社会に浸透していなくて、今より詩的な風合いがあったのです。
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